【森山開次《サーカス》2018年再演 初日】
2018年5月19日
初日の幕が開けてしまえば、ぼくの出番はおしまい。あとは、劇場の音響チームと作り上げたこの音空間をお客さんと一緒に楽しむだけ。
自身も3年ぶりにこの作品を観て、新たに思うことがたくさんある。
子供のころ、母に連れられていった実際のサーカス──無自覚ながら、なぜあれほどまでに興奮したのだろう?
猛獣使いが現れて、火縄潜りがあって、おどけたピエロが不可思議な音楽に乗って登場する──わざわざ、頰に涙のしずくを書き記した表情で──球体の中を360度バイクが駆け巡ったシーンも鮮明に記憶に残っている。そしてハイライトは、空中ブランコだ。
いま思えば、すべて命がけでの技ばかり。
我らがまっさかサまーカス団もそれは同じこと。万が一ステップを誤れば…フォーメーションが崩れたりしたら、ダンサー生命が脅かされる場合もあり得る。
──生きるとは、まさに命を賭した営み──
ぼくたちは、人生という名の舞台を生きている。当たり前のことなどなにもないのに、明くる日=次のシーンがやってくるとどこかで思い込んでいる。
──「また明日」──
その言葉は、もう一度会えると信じて交わす祈りだ。
──「おはよう」──
次に目覚めて顔をあわせるまで、今日が最後になるかもしれないのだから。
──生あるすべての瞬間は奇跡に他ならない──
このきらめく奇跡を、劇場で見届けていただけたら光栄である。
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