川瀬浩介|生きる。

或るロマンティストの営み

【記念すべき日の朝に──Peter Gabriel ‘Solsbury Hill’】


2020年5月25日

このところまた、ピーター・ゲイブリエルをよく聴いている。

今朝は、自分の音楽キャリアを総括する作品をまとめ上げた記念すべきとき──そんな日の朝に、彼の代表曲のひとつである〈Solsbury Hill〉を聴きたくなった。そしてわかったことがある。そのワケを、早朝5時過ぎの今、ひとり自宅で噛み締めている。

デビューアルバムに収められたこの曲は、名の知れたバンドから独立してソロキャリアを歩み始めたときの彼の心境が描かれた曲としても知られている。家族を持ち、初めて授かったお子さんとの暮らしのため移り住んだ田舎町から街の夜景を見下ろす・・・そんなくだりから物語は始まる。

何度も耳にしてきた曲だが、改めてこの歌詩に目を通すと、新しい道へ進むための決意や期待、そして同時に不安のようなものを感じる。先日出会ったこの曲の公式ライブ映像は、彼のキャリアを総括した編集になっていて、デビュー当時の若い時代から、数々の実験的かつ刺激的な作品群を経たのち、狙った通りにビッグヒットを飛ばし掴んだキャリア後年の余裕の表情までが網羅されている。

ぼくにとっての彼の魅力は、政治的メッセージを込めた作品を手がけるシリアスな一面と、一方でどこか憎めないチャーミングさを兼ね備えている点にある。さらに付け加えると、一筋縄ではいかない「クセ」や「アク」を音作りに散りばめているところもぼくを刺激し続ける(例えばこの曲は、こんなにポップで自然に歌えるのに7拍子で構成されている)。この上なく真面目極まりない強さと勇気、美しさを見せながらも、猿メイクでステージに現れたり、逆さ吊りになって歌ったり(しかも娘さんと親子揃って)、さらにはこの映像にもあるように自転車を漕ぎながらステージを駆け回るのだ。そしてときには、彼の真骨頂でもあるデュエットによるラブソングを書き上げてくる──懐が深いというのか? それとも「おおらか」と表現するべきか? そんなある種の「大きさ」に魅せられ続けている。


──それを「愛」と呼ぶのかもしれない──


それが今朝の気づきだ。今この曲を聴くと、これまでになく熱いものが自ずとこみ上げてくるのは、きっとそのせいに違いない。そうか、彼のその大きさは「天使=ゲイブリエル」と名付けられるに相応しい大器のことを指しているに他ならないのだ。

そんなこのうえなく大きなものを、ぼく自身もようやく感じ取れるようになったのだろうか?

さて、仕上がったばかりの我が大河作品集──名付けて・・・


──ROMANTICMAN ESSENTIALS──


ここからどんな物語が始まるのだろうか? いや、その物語は、既に綴られているに違いない。というのは、全40曲もの自身の作品を年代順に並べて聴き返すと、まるで最初から予定されていたかのような音楽的変遷を辿っていくことに気づいたからである。

きっとこの先に授けられる音楽もまた、「そのとき」を迎えられた瞬間にだけ、ぼくのもとにやってくるのだろう。それがどんな姿なのか? そしてその音楽が、どんな風景をぼくの心象に映し出してくれるのか? 

その瞬間を再び望むまで、いかなる困難をも超えていくのだ。


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