川瀬浩介|生きる。

或るロマンティストの営み

【未だ果たし得ぬ約束】

 

2020年5月16日

彼の音楽をどこへ行くにも聴いていたのは、もう30年前くらい前のことになるのか? それは、iPodiPhoneが登場する遥か前の、未だWALKMANが世界を席巻していた時代の大切な記憶である。


──Peter Gabriel──


今も昔も、表立った活動は数年に一度くらいな氏。近年の活動で最も印象的だったのは、過去の自身の楽曲をオーケストラで再現した《New Blood》(2011)だったが(ぼくが知る限りロックがオーケストラ・アレンジに挑戦したプロジェクトとして最も成功したアルバム)、いつも絶好のタイミングで聴きかえすことになる。今日もそんな瞬間が訪れた。この危機に見舞われるなか行われている氏のスタジオライブシリーズのひとつらしい。


〈More Than This〉


恐らく、氏のカタログのなかで最後にスタジオ録音されたオリジナルアルバムという位置づけになる《UP》(2002)に収録された一曲である。リリース当時はあまりピンとこなかったこの曲も、「いま」歌の内容に触れると、こころ揺さぶられるものを感じずにはいられない。


──歌詩──


その素晴らしさは、言葉そのものの意味を超えて、聴くもの心象に無限の景色を広げてくれることにある。その力をようやくぼく自身も使いこなせるようになってきた──そんな手応えを最近感じ始めている。


──これまでやってこなかった表現をやるとき──


この危機が知らせてくれた「ある解」が、ここにあるような気がした。それは、いまのぼくがかつての自分と交わした「未だ果たし得ぬ約束」なのだ。


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